
この記事は一般貨物事業者に下った、2025年7月付の行政処分を紹介しています。
行政処分を受けると、たとえ文書警告(違反点数0点)であっても、管轄運輸局のウェブサイト上で実名付きで5年間公開されます。また、事業停止命令が発出された場合はこれとは別に、リアルタイムでプレスリリースされます。
さて今月は、全国で72件、うち事業停止命令1件でした。
行政処分で公表されるのは、
です。事業者点数と営業所点数というのは違反点数のことです。
行政処分は営業所ごとに付与されます。それとは別に、事業者(法人・個人)主体にも付与されます。事業者に違反点数が累計81点となると許可取消しになります。
行政処分は営業所に対して行われます。ある一般貨物事業者さんが一つの営業所しか構えていなかった場合は、事業者点数=営業所点数となります。
また、複数の営業所を構えていて、複数の営業所に違反点数が付いている場合は、事業者点数は合算した点数、営業所点数はその営業所の違反点数ということになります。
この公表された事例はコンプライアンス教材としてとても参考になります。
違反行為の概要=違反理由なので、「何を怠れば重大違反なのか。」それを知れるだけでも意味があります。
ちなみに理由の多さと違反点数はあまり比例しません。というのも、初違反は文書警告で点数0点ということの方が多いのと、総合判断をされるからです。
さて、各地方運輸局ごとの公表です。
2025年7月:行政処分件数
地方運輸局 | 件数 | 特記事項 |
北海道運輸局 | 0件 | |
東北運輸局 | 17件 | うち事業停止1件 |
関東運輸局 | 24件 | |
北陸信越運輸局 | 2件 | |
中部運輸局 | 7件 | |
近畿運輸局 | 5件 | |
中国運輸局 | 2件 | |
四国運輸局 | 3件 | |
九州運輸局 | 10件 | |
沖縄総合事務局 運輸部 | 2件 |
今月は東北運輸局の数がいつもに比べて多いです。行政処分は監査の後すぐに出る場合と、半年ぐらい経ってから出る場合があります。行政処分が支局長案件 or 地方運輸局長案件で違ってきます。
公表される行政処分には「違反行為の概要」という欄があります。この冒頭には、監査に至った理由の記載があります。
「情報提供」が多いのですが、「死亡事故」であったり「過積載」という理由だったりもします。地方運輸局によっては「労働局との合同監査」を理由に挙げている所もあります。
なお、情報提供は従業員の通報だったりします。関係機関通報は「公安委員会」「労働局」と名指しされていますので情報提供にこれらは含みません。
7月の行政処分の中にひとつ、「行政処分等を受けたにもかかわらず改善が認められないこと及び死亡事故があった旨の公安委員会からの通知」というものがありました。これは初めて目にしました。
死亡事故発生 → 警察(公安委員会) → 運輸局
という関係機関通報の流れがあるので、交通事故はくれぐれも発生させないよう運転者へ安全教育をお願いします。
気になるのは「行政処分等を受けたにもかかわらず改善が認められないこと」の部分です。
本件が巡回指導または監査結果の改善期間中を指すのか、それとも改善報告が未提出なのか、詳細は分かりません。
巡回指導や監査では、3か月以内の改善報告提出が求められます。この改善報告の有無は運輸局も把握しています。
これは貨物自動車運送事業法第60条第1項:「国土交通大臣は、この法律の施行に必要な限度において、国土交通省令で定めるところにより、貨物自動車運送事業者に対し、その事業に関し報告をさせることができる。」の違反として、行政処分対象の違反行為となります
巡回指導でも、3か月以内の改善報告がない場合はそのまま監査理由になってしまいます。
コンプライアンス遵守の求めは年々厳しくなってきています。軽んじることのないようにお願い申し上げます。
監査で違反が指摘されたら改善報告をしなければなりません。このとき、報告で求められるのは「違反ゼロ」です。つまり「正しい基準を知っていなければ何が違反なのか分からない」のです。そして、改善報告対応するだけでも社内のマンパワーを割かなくてはいけないので、早く決着をする必要があります。
正しい知識を運行管理者等が知っていれば自社で対応もできるでしょう。けれどそれが難しい場合は、外部の専門家に頼るしかありません。しかし、運送制度に詳しく、監査に対応できる専門家はとても少ないのです。
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