
「今回も巡回指導はなんとかなったし♪」
誰もが知るあの大企業も、そう考えていたのかもしれません。
しかし監査で運輸局のチェックが入ると、安全優良事業所認定を受けているにも関わらずその杜撰な管理体制があらわにされて、令和7年6月25日に一般貨物自動車運送事業の許可を取り消されてしまいました。
巡回指導では実施日の3週間前には事前通知が必ず入ります。けれども監査は原則無通告でいきなり職員がやってきて、およそ3か月分の資料を隅々まで抜打ちチェックします。
とはいえ、監査になる身の覚えはあるはずです。
これらは突然発生するものだからです。そしてこれを把握した運輸局が明日に動くのか一週間後なのか、確実な日付は分からないからです。
※労働局は独自の抜打ちチェックがあります。そこで違反が見つかると監査に発展する可能性があります。四国運輸局の管轄地域では「労働局との合同監査」をきっかけにした行政処分例もあります。
とはいえ、監査は重大な違反の“疑い”があるから実施されるのであって、証拠がなければお咎めなしです。日頃からやるべきことをきちんとしていれば審査内容は巡回指導と同じなので病的に恐れるようなものではありません。
ただし、普段から怠けていれば話は別です。前回受けた巡回指導の成績が良かったとしても、「直近1か月の体裁を整えただけの結果」であればそれに何の意味があるのでしょう。
じつは監査基準もペナルティ基準も公開されているので誰でも簡単に調べることはできます。でも運輸局職員が明日にもやってくるかもしれないのに、今から3か月分の帳簿類を運行管理者だけですべて総チェックなんて無理。全従業員を動員しても、皆が法令を把握できていないなら”何が違反に該当するか”なんて分かるはずがありません。
こうして“ありのままの姿”がバレてしまうのです。
自信をもってできない場合、監査の当日対応にかなり不安があると言えます。
運行管理者さまの知識面をアップデートさせるとともに、ぜひ相談役を用意してあげてください。相談役が社内にいなければ社外に求めてください。
それだけで社長の負担がぐっと緩和されるはずです。
重大違反が認定されるとペナルティ基準に従って行政処分が下ります。違反項目によっては「文書警告」(違反点数0点)で済むこともありますが、それでも5年の間、行政処分事業者として公表され続け、社会的信用が低下します。これは取引環境に影響が及びます。
違反点数が付けば「日車処分」といって車両の使用停止命令が出されます。ナンバーを持ち帰られるので走行できなくなります。飲酒運転などの悪質違反の場合は「事業停止命令」が出され、指定された日数の間、利用運送も含めた運送営業そのものができなくなってしまいます。
これらの詳細は各地方運輸局のウェブサイトで確認することができます。
実際、売上にどれだけの影響が出るでしょうか。試算してみましょう。
車両1台の一月の売上80万円:一月の稼働日数20日としたとき、
4万円@1日の売上が失われる試算です。
違反点数1点につき10日車ですから、1点当たり40万円の売上が失われる見込みです。
また違反点数が多いと複数台が止められてしまうため、輸送能力そのものが大幅に落ちてしまいます。
加えて、長時間労働違反の指摘を受けた場合は、改善報告のために当然、一運転者あたりの稼働時間を短くしなければなりません。止められた車両の分、運転者は余るかもしれませんが
という影響が考えられるため、更なる売上減または経費増によって利益率が大幅に悪化してしまいます。
行政処分を受けたことで取引先も関係を見直す、なんてこともあるかもしれません。
「倒産情報に載った運送事業者さまが実は半年前に行政処分を受け、車両がとめられていた」という事例も存在します。
こうした状況に従業員も悲観的になり、それ以上に社長の心労が一気に積みあがってしまいます。
この状況から脱するためには短期決戦で違反ゼロにするしかありません。なぜなら、運輸局は違反ゼロになるまで改善報告を認めてくれないからです。長時間労働違反の指摘を受けるとこの点が本当につらい。
指摘事項が何であれ、改善するため正しい法令知識を一番持っているのは選任された運行管理者のハズですが、ここが音を上げてしまうと状況はかなり厳しいと言えます。そうなると長期化し、赤字はどんどん膨らむばかり。
こうなると打つ手なしとして「もう、新しく許可を取り直したほうがいいんじゃない?」と考えだす事業者さんも珍しくありません。とはいえ、そんな資金確保も相当負担で……
やっとの思いで改善報告を認めてもらっても、この後にフォローアップ監査やフォローアップ巡回指導が控えています。
労務関係の専門家は社労士さんです。税理士さんを顧問に据えている事業者さんがほとんどですが、この問題に税理士さんは専門外です。そして社労士さんも貨物自動車運送事業関連法になると専門から外れがちです。弁護士さんも運送トラブルには強くても、運輸制度に明るいとまでは言えません。
一般貨物許可でお世話になった行政書士も、手続きはできても監査はおろか巡回指導すら対応できない場合がほとんどです。
実際に監査に対応できるのは、
しかいないのが現状です。そしてその数は決して多くはありません。
まずは運行管理者に巡回移動に向けた自己評価チェックを行ってもらいしょう。これが自信満々にできないのであれば、運行管理者試験勉強を復習させるなりして、自己評価チェックができるまでスキルアップしてもらう必要があるでしょう。
作業手順書を作成し、誰が見てもできるようにしておくのも方法の一つです。そうすれば「あの人がいないと何もわからない!」ということは避けられるでしょう。
もしその荷が重いのであれば外部の対応できる人材を探して、いざという時のために頼れる先を見つけてコネクションを築きましょう。
当行政書士事務所は(と言ってもわたし一人で切り盛りしているのですが)貨物自動車運送事業に特化しており、監査になった事業者さまの支援実績もございます。可能な限り、訪問や同伴を行い、不安を和らげられるよう努めています。
監査に対応するのはどうしても長期にわたる関与が必要となりますが、その間に辛苦を共にするためかその後も「ちょっと来てもらえる?」と気やすく声をかけられる良い関係を築けることがほとんどです。
関わった人がその後順調であること、それが支援者としてのわたしの望みです。
岡山県・鳥取県全域、島根県東部地域・広島県東部地域であればお伺いできます。
倉敷市から100km圏外の場合は交通費を頂く場合があります。
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