
この記事は一般貨物自動車運送事業の許可申請を
に向けたものとなっています。
「こんな時代に、なぜわざわざ新規で緑ナンバーを取りたいんだ?」
この言葉は、現役の社長がみんな口にする言葉です。それほどまでに、走るだけ稼げた昔と違っていまの一般貨物自動車運送事業は、法令の規制だらけで思ったように稼げない、原価率の高い事業です。「そんな細かいことをいちいち言うなら、いますぐ辞めてやらぁ!」こんな啖呵もよく聞かされます。
それでも、「大型トラック」の魅力に抗えない人や軽貨物運送事業から事業規模を拡大させたい人などが、さまざまな動機と希望を胸に、許可取得を目指している人たちがいます。
あなたもそうでしょうか?
一般貨物の許可申請について、事前に調べられる方は多いです。あなたもそのお一人でしょう。運輸局のウェブサイトには自分で許可申請できるように「申請の手引き」が用意されていますし、それを解説した他のウェブサイトも多く存在します。ですので、その気になれば自分で申請できてしまうのが現実です。
そのため申請書類の作成を「必要なことを書きさえすればいいんでしょ?」と虫食い問題を回答するようなものと安易に考えている方が多いのは事実です。それ以上に「自分でやれば安上がりじゃない?」という方が多いかもしれません。
確かに自分でしたほうが安上がりですけれども、申請では次のような地雷が潜んでいます。
@不動産の落とし穴――営業所・車庫の適否
営業所・車庫に使える不動産選定は大きなネックポイントです。
賃料が安いからといって選んだ土地が、実は市街化調整区域だった、あるいは農地だったというケースは少なくありません。これらの物件は、営業所・車庫の用途にはほぼ不適格とされ、審査は通りません。 ※手順を踏めば可能性はあります
しかも不動産屋さんは運輸行政の規制に詳しいほうが稀で、不動産屋さんの言葉を信じて調達した不動産が、審査が通らないことが分かるなんてことはよくある話です。
何より許可が下りてもすぐには事業開始できないので賃貸の場合は事業開始前に賃料支払開始が始まるケースが多く、これを予定に入れていないために目減りしていく預金残高に焦りだす方もまた多いお話しです。これが不適格不動産だった場合は目も当てられない大惨事です。
A車両・人員の落とし穴──要資格者が揃わない
申請には5台以上の貨物車両の車検証を用意しなければなりません。調達は、購入やリースの他、調達コストを抑えるため知人から無償譲渡の方法もありますが、いずれにしても申請車両と運輸開始時の車両が一致していなければなりません。運輸開始前に車両を入れ替えること自体はできるけれど、「許可取消し級」のトラブルに発展する可能性のリスクがあることを覚えておいてください。この地雷を踏んじゃうと資金不足がほぼ確定なので、再申請自体が難しくなります。許可を取得できたのに取り消されちゃうのは嫌でしょう?
人員面では、
の確保を担保しなければなりません。。
管理者の選任には国家資格や相応しい場所での実務経験が必要です。将来の人材リスクを考えると会社役員さまが資格を持っていると良いのですけど、年2回の試験になかなか合格できずに確保の予定が立たずなんてことはよくあります。
運転者の数もさることながら、車両規格にあった運転免許資格も備えていなければなりません。でないと無免許運転になってしまいます。最近の普通運転免許は「2tトラックも運転できない」ですからね。
B参入最大の壁は「資金計画」──資金調達も同時進行で
新規許可申請で最大のハードルになるのが資金計画です。
上記のリスクも潤沢な資金さえあれば簡単に解決できます。とはいえ現実には、それだけのお金を短期間で調達するのは至難の業です。
「いくら用意すればいいの?」とよく尋ねられますが、これは一概に答えられません。申請内容や設備状況によって金額は大きく変動しますし、理想を盛り込めば、それこそ目がくらむような金額になることもあります。
また、許可審査は準備資金が足りないと通らないため、融資制度を利用することも選択肢から外せれません。融資は必須事項ではないけれど、申請の資金計画は満たせても高い原価率の事業ですので、運転資金の調達のためにもやはり、融資を考えておくことをお勧めします。
※資金計画トラブル事例はこちら
替わりのいない役員法令試験──許可後に控える手続きもあり
申請書類を提出しても一息入れる間もありません。会社役員1名が筆記試験を受け合格しなければなりません。正答8割が合格基準でチャンスは2回まで。合格しないと許可が下りません。2回不合格が続くと申請は取り下げなければならず、再申請できるとはいえスケジュールはそのぶん遅れます。
そして何より、法令順守を一層求められる業種ですので、法令試験に合格した以上は「そんな法令知らなかった」と言えなくなります。
許可後の地雷
許可が下りたらすぐにトラック事業を始められるかというとそんなことはありません。トラック事業の準備が完全に整ったことを報告しなければなりません。そして設定した運賃料金の届出・緑ナンバー化と自動車保険の全車加入を証明し、事業を開始したことを届出してようやく、申請がすべて終わります。
既存法人さんだとここで躓くことはないけれど、新規法人を立ち上げてる場合は意外と躓くケースが多いように思います。
地雷は前述したとおり「申請車両と実際に調達した車両が一致するかどうか?」が主ですが、人材に逃げられて替わりが見つからない・保険関係の控え書類が見つからないというケースも起きたりします。
専門家に頼らず自力で申請する人は、アドバイスなしにこのようなリスクを自ら負うことになるのです。
許可が下りて運輸開始したあとは「許可事業者としての義務」として、一連の手続き最後の展開が待っています。
巡回指導──「法令順守」とのファーストコンタクト
ようやく許可が下りて運輸開始までこぎつけても、すぐに「巡回指導」という名の法令チェックが始まります。トラック事業者として当然の運営体制のチェックを受けることになります。先んじて案内が届くのですが「以下の帳簿を準備してください」とあるだけで、それを具体的のどのように準備すればよいかは書かれていません。
そしてこの巡回指導の評価が悪ければ運輸局から呼出指導がかかり、場合によっては半年後に再指導、そこでも悪ければ再々指導、これでも悪ければ「法令順守の意思なし」とみなされて「監査」に踏み込まれる事態にも発展します。
つまり、許可を取得した時点で運輸開始に向けて、法令遵守を常態化できる仕組み作りを進めていかなければなりません。これはどの申請手引きにも載っていません。また、2028年6月には「許可の更新制」が導入され、法令順守ができない事業者は更新できなくなる可能性が十分あります。
申請書類作成の専門家ではこの分野を対応することはできません。これに対応できる専門家はとても希少なのです。
加えて2025年からしばらくは、トラック事業制度が大きく変わる節目の時です。最新の法改正情報に目を配り、「更新制」を見据えて、この分野の相談・対応できる人を確保できるかどうかは、今後の事業運営を左右すると言っても過言ではありません。
なお、新規申請だけが一般貨物自動車運送許可の取得方法ではありません。すでに許可を持つ事業者の「譲渡譲受」や、M&Aによる取得というルートもあります。これらは状況によってメリット・デメリットがありますので、希望される場合は本当に専門家に相談することをおすすめします。
相談者さまから「提示される依頼料が高い」と言われます。これは当然のことで「本来あなたが自ら行うはずだった手続きとリスク、そのすべてを代理人として背負うからこその対価」なのですから。あなたはご自身を安売りされることはなさらないでしょう。
もし費用だけを優先されるのであれば、社内で対応する選択もあるかもしれません。しかしその場合は、リスクもすべてご自身で背負う覚悟が必要です。
一般貨物自動車運送業の新規許可申請は、「審査に通る書類を書く」だけの話ではありません。事業計画・資金繰り・人材確保・不動産調整・車両準備・法令知識――これら要素が絡み合い、数年先を見据えた視点が求められます。
「どこから手をつけたらいいかわからない」と感じたら、早めに専門家にご相談ください。可能であれば、今後も相談でき、任せられる専門家とお付き合いください。
当事務所は、申請書類作成はもちろん、準備段階の資金計画相談や不動産適否調査、法令試験対策、事業開始後の法令順守・巡回指導対策まで、一連の流れを見据えたサポートを行っています。
岡山県・鳥取県全域、島根県東部地域・広島県東部地域であればお伺いできます。
倉敷市から100km圏外の場合は交通費を頂く場合があります。
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