
これは令和7年7月13日に国土交通省ウェブサイトで公開された「標準的運賃に係る実態調査結果について(令和6年度)」を読んだ感想記事です。
2024年4月から国土交通省はトラック運送事業の運賃料金の“目安”になる「標準的運賃」を改定しました。これもあって2024年のトラック運送業界は「運賃交渉」がホットトピックであり続けました。
国もトラック事業者や荷主に「運賃交渉」を促進するよう、公正取引委員会が交渉の場を設けようとしない企業を公表したり、下請法を改正したりと、働きかけを強めていました。
わたしもいくつかの事業者さまから「運賃交渉用の資料作成を頼めますか?」と相談を頂きました。
そんなこともあり、2024年中の「標準的運賃に係る実態調査の結果」が公開されたことは、このトレンドの現在地を確認する意味でも重要な情報源です。
トラック事業者への調査の分母はおよそ1100社。
残りの3割弱は「なぜ運賃交渉に臨まなかったのか?」:その理由 ※複数回答
契約数ベースで見ると、運賃の改定は3割超に過ぎません。(数字マジック)
賃金の上昇率は?
一次情報
プレスリリース https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000337.html
概要 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001900316.pdf
別紙 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001900317.pdf
運輸局のウェブサイトから視聴できる月例「トラック物流2024年問題に関するオンライン説明会」でもホットトピックの運賃交渉。こちらのアンケートでは「運賃料金の収受は標準的運賃の6割程度」という回答が多数だったため、「およそ半数がおおむね標準的運賃を収受できている」というのは意外と思える結果のように感じました。
その他の結果はオンライン説明会の傾向と変わらない感じでした。
つまり荷主の半数はなにがしか運賃改定に応じている結果になっています。それなら勝率は良いわけだから運賃交渉をすればいいのに、やらない理由は
確かに「この料金で走る事業者は他にもいる」とよく耳にします。この悪い意味での三すくみのため「動きたくても動けないから、動かない」決定をやむなくしている、と。
また
という方もいらっしゃいます。この辺の消費者心理はとても共感できる分、いつかどこかで腹をくくるときがくるでしょう。
そして案の定というか、労務費転嫁ができていません。政府も「賃金アップを!」なんて言いますが、売上が上がらないのに経費を上げられるはずがありません。おそらく30年景気が低迷している理由が、人件費を転嫁してこなかったことだと思っています。わたしもブラック企業にいてサービス残業は散々やってきたのでわかるのですが、製造原価で一番安いのは人件費でしたからね。
時給2000円相当分を価格に転嫁できないと、この先厳しいことになると予想立てています。
一方で数字マジック? わたしには読み解けない部分もありました。
それは「運賃改定となった事業者の割合」は高くても、「運賃改定となった運送委託契約数は少ない」という統計もありました。つまり、あるかないかで言えば「ある」のだけれども、全体の割合は「やっぱり少ない」のではないか? という疑念を拭えるほどではないのでは? という疑問は残ったままです。
ちらちら漏れ聞く噂に、更新にかかる条件の中に
があります。「稼げているかどうか?」だけではなく、「黒字化のために賃金を絞っていないか?」という連立方程式があるかもしれません。もちろん、今の段階で更新条件は公式になにもアナウンスされていないけれど、会議資料等の中で言及はされています。
ですので今後、運賃交渉は避けられなくなるし稼げれていないと賃金も支払えません。これらは急に達成できるものではないため、すぐに行動に取り掛からないと間に合わないということになりかねません。やはり腹を決めて、運賃交渉に臨むのが吉なのでしょう。