
この記事は軽貨物事業者さま向けのものとなっています。
軽貨物の原価計算についての記述になります。
運送業は高い原価率のビジネスです。売上=所得ではない点に注意をむけることが目的です。
経費の考え方について参考になれば幸いです。
「運賃を上げてください」と申し入れても「では資料をお願いします」と言われるものです。
そのため交渉に臨む前に
は決めておかないと、「とにかく上げてください」では相手方も交渉になりません。「このままではジリ貧なんですぅ(泣)」と情を誘うにしても、求める値上げ幅を決めるためにも原価計算は欠かせません。
損益結果は「売上から経費を引いて、余れば黒字・マイナスは赤字」という理屈です。経費のことを「原価」とも言います。
原価には「製造原価」と「営業原価」の2種類があります。
「売上を直接生み出す経費」のことを製造原価と言います。これは従業員の人件費や燃料費などを言います。
営業原価は製造原価に販売管理費を加えたものです。「売上には直接関与しないけど、事業活動のために必要な経費」のことを販売管理費と言います。これは家賃や光熱費などを言います。
製造原価には稼働率がどうだろうと変わらない「固定費」と稼働率によって変わる「変動費」のふたつに分かれます。
経費の関係はこのようなものになります。
・製造原価
固定費
変動費
・販売管理費(販管費)
ここからは、軽貨物を始めている人はもちろんのこと、これから始める人にこそ読んでもらいたいと思っています。軽貨物はこれだけお金がかかるぞ、という現実を知ってもらいたいと思います。なお、試算数字は仮のモデルで実際のものとは異なります。
まず試算の条件設定です。
1か月の製造原価の費目は次のように試算
固定費として
費目 | 月額 | 備考 |
保険料(任意自動車保険(車両、弁護士特約付き)・貨物保険) | \15,000 | 一般的な月額 |
車両償却費 | \41,667 | 200万円÷4年÷12ヶ月 |
車検・自動車税関連 | \7,000 | 年額84,000円の按分想定 |
損害賠償準備金 | \5,000 | 自己負担リスク対策 |
変動費として
費目 | 月額 | 備考 |
燃料費 | \46,500 | 150円/リットル × (24日×100km ÷ 8km/リットル) |
修繕費 | \10,000 | タイヤ・オイルなど |
(小計)\125,167
1か月の販管費の費目は次のように試算
費目 | 月額 | 備考 |
事業主報酬 | \360,000 | 1,500円 × 10h × 24日(実質生活費) |
国民年金保険・国民健康保険 | \35,000 | 概算(等級・地域により変動) |
通信費(スマホ・アプリ代) | \10,000 | 配達システム利用等 |
自営労災共済保険 | \5,000 | 中小企業共済など |
諸会費・手数料等 | 5,000 | フランチャイズ料・振込料など最小構成として |
(小計)\415,000
(合計)\530,167-
本来は、個人事業主なので売上から営業経費を引いた金額が所得になります。ただこの記事では「所得」と「利益」の違いにも注目してもらいたいので、あえて販管費に入れています。
ここまでで1か月の営業原価がおおまかに出ました。事業主さんごとに事情は違うのですから、試算表と違って当然です。
さて利益を出すためには売上は営業経費を超えなければなりません。それで1日の売上はどれくらい必要なのかというと、
営業原価÷稼働日数=1日の売上目標
になります。
上記概算だと \530,167÷24日=\22,090 となり、1日あたり22,090円以上の売上を出さないと赤字となります。
そして時給1500円で計算して月36万円の所得ですが、月53万円の売上では利益は0円です。
「稼ぐ」とは、ここからどれだけ積み増すことができるか、そういうことを言うのです。
そして53万円の売上を達成できなければ、ダイレクトにあなたの所得がどんどん減っていきます。
脅すようですが、これが商売のリスクです。
一攫千金を狙うことがどれだけ危ういことか、よく検討して頂ければと願っています。
※確定申告で税金が掛かるのですが、この度は無視して記述します。
赤字脱却が最低目標です。取る方法は
の2択しかありません。経費削減には限度があるので、いかに売上を増額できるかに集中することになるでしょう。委託単価を上げてもらう、単価の良い仕事を探す、仕事の口数を増やすためにできることを行いましょう。
どれだけ自分の取り分を増やしたいか? という話しになります。時給1500円のままでいい? という話しです。
もっと稼ぎたいなら利益率悪い仕事を切って、利益率が良い仕事へどんどんシフトしたり、車両台数を増やして事業規模を拡大したり、複業をするなど、収益率を上げることを考えて実行しなければ実現は難しいと言えます。
近年の経費増で運転資金繰りが厳しいとおっしゃっていた相談者さまから、1年ぶりに
「ようやく委託料交渉が陽の目をみました」
と連絡を頂きました。
個建の10円upだそうですが、これだけでも結果がでるまで1年掛かっています。
軽貨物を始めるにあたっての求められる要件は「軽自動車を用意できるかどうか」しかないので、参入障壁は「誰でも始められる」低いものとなっています。
誰でも始めやすいビジネスはやはり参入者が多いため、一攫千金を夢見て、起死回生を求めて参入する人も多くいらっしゃると聞いています。そして夢見て入った業界が思いもかけずにお金のかかることを知り「こんなハズじゃなかった」と退出する人も多いとも聞いています。
やはりビジネスを立ち上げるというのはオオゴトですので慎重であって欲しいと思います。
ただ軽貨物は、設備投資より運転資金が厳しいタイプなので、お客さま開拓が上手にできれば回っていくのではと思います。
原価の計算、運賃交渉用資料の作成を承っています。
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