
「監査の連絡が来るらしいんだけど?」このようなご相談を受けることがあります。ですが詳しくお伺いすると、「巡回指導」だったということが多いです。監査は無通告に対し、巡回指導は3週間前には文書で事前に連絡があるという違いがあります。まあ、運輸局から封筒が届けばびっくりしますよね。
巡回指導の事前案内には「こういった帳簿類を事前に準備しておいてください」と書かれているので、基本的には、記載されている帳簿類を調えておく必要があります。
ただ、「初めて受けます!」という方は、案内に記載されている帳簿類が何を指すのか分からないかもしれません。
もっとも、帳簿の有無だけをチェックを受けるわけではありません。
巡回指導とは運輸局の事業で、委託を受けている「適性化実施機関」によって@営業所が事業計画に沿って事業運用されていること、A営業所に備付けてあるハズの帳簿や毎日の業務で記帳しなければならない帳簿の有無と内容のチェックが38項目に渡って行われます。
適性化実施機関から2名の職員さんがやってきて、営業所で対面で行われます。
巡回指導は指導の結果がA~Eで示されます。Aの方が成績が良く、Eに近づくほど悪い成績となります。
成績に関係なく、指摘事項は3か月以内に改善報告を出さなくてはなりません。
加えてD・Eはより注意が必要ということで「運輸支局から呼出し指導 + 半年後に再巡回指導」という措置が待っています。仏の顔も三度までといったもので、三回連続でD・Eになると「監査」が待っています。
さらにEは半年間「事業計画の変更」が一切できないというペナルティが待っています。
事業計画の変更ができないということは「増減車や車両入替ができなくなる」ことを意味します。
許可を取得して運輸開始した人は、運輸開始届出の提出後2〜3か月後に巡回指導の案内が届くでしょう。その案内に書かれている帳簿類を目にして「何コレ?」となるかもしれません。
初めて臨む人にとってはまず「帳簿類を調えておくこと」のハードルが高いと思います。知り合いや許可取得を世話してくれた人が精通していればアドバイスを貰えるでしょう。しかし、アドバイスが貰えないとあれやこれやが足りない、気付いても指導日までに帳簿類を整えきれない、というケースも少なくありません。
例えば、運転者を選任すれば「運転者台帳」を調えなければなりませんが、運転者の選任時には「適性診断」を受診させなければならず、適性診断を受けさせるためには「運転記録証明」を取り寄せなければなりません。また、事業用車両の運転経験者でなければ規定時間の座学・横乗りの「初任教育」を施し、記録を付け、保管しておかなくてはなりません。もちろん、運転者台帳には「必須記載事項」を記入しなければなりません。
外部機関を使うものは他にもありますので、案内が届いてから「やってなかった!」と気づいても「間に合わない」ということはしばしば発生します。
日常業務は記録を付けて保管しなければなりません。点呼簿・業務日報は必須記載事項に加えて、運転者の働き方が「改善基準告示に適合しているか?」というところまでチェックを受けます。つまり、法令知識まで求められます。
指摘されることについて、「…まあ、ちょっと指摘されるくらいで済むだろう」と軽視してしまう方もいます。しかし、指摘を受けた事項は3か月以内に改善報告を提出しなければなりません。帳簿の不備は、遅かれ早かれ必ず是正が求められることになります。
ちなみに無視を決め込むと、半年後に巡回指導が行われますので、正面から課題解決に向き合ってください。
一般貨物の許可が更新制に移行することが決まっています。国にとって許可を取り消すことより「許可を更新させない」ほうが負担が掛からないので、コンプライアンスを守れない事業者は放っておいた方がタイムアップとなる可能性が高いです。
国土交通省は2024年4月以降「不適切な事業者は退出してもらう」と何度も言及しています。
その最たる例として、2025年6月25日付の「日本郵便株式会社の許可取消し処分」です。運送事業者の基本中の基本である「点呼」の未実施が、内部通報を端緒に監査が行われました。
その結果、点呼の「未実施」よりも「不実記載(捏造)」の違反点数がより重い悪質違反とされ、許可取消処分となる基準の倍以上の違反点数が付され、一発で全国組織の企業が許可を取消され、退場させられました。
巡回指導は2023年4月に制度が一部改正され、コンプライアンス遵守ができない事業者に対し、既に厳しくなっています。2025年4月から改正物流二法の施行が始まり、加えて、2025年6月に更なる法改正があり2028年には改正法が施行されることが予定されています。規制は今後も増えていきます。
今後も貨物自動車運送事業を営んでいきたければ、コンプライアンス遵守は避けて通れない重要なテーマになるでしょう。
(2025年7月に記述しています。更新制の具体的中身について公式見解は出ていません。言及した内容の一次情報は国土交通省の有識者会議等のものです)
「巡回指導の準備を整えたい」とお考えであれば、できることは2つです。
一つは運行管理者を訓練して、巡回指導対策ができるように育ててください。トラック協会に聞きに行かせても良いかもしれません。
二つ目として、外部に頼ってください。知り合いの運送事業者さんに尋ねるのも良いでしょうし、当方へ相談してくれても構いません。
わたしは運送業の行政手続き専門家です。巡回指導でお客さまの伴走は何度も経験があります。「誤魔化し」ではなく、正しい対処法でサポートしています。
フルサービスでは
と、最後までお供させて頂いています。特に「当日同伴」は孤独に指導員に応対する社長さま、または、担当責任者さまから高い満足度を勝ち得ています。
ここでは巡回指導のすべてを記していません。38項目を詳細に語るのは難しく、簡潔に述べるには足らなくなるからです。
コンプライアンス遵守は巡回指導対策のためだけにあるのではありません。その後もずっと続く課題です。それなら将来に向けて、確かな改善と安全意識を高め、安全性優良事業所認定(Gマーク)を受けられることを目指しましょう。
中には「巡回指導なんて大したことないよ」「こうすれば指導員を騙せるよ」と仰る方も確かにいらっしゃいます。けれどそれが本当に「あなたの事業のため」になるでしょうか?
上で挙げた日本郵便株式会社の監査を受けた営業所はすべて「安全性優良事業者認定」を受けていた営業所でした。コンプライアンスを軽視したばかりに許可取消しという結果となりました。
正しく物事を理解すれば、巡回指導を独力で対応するのは決して難しい話ではないのです。
でもそうなるためにはきっと、あなたに必要なのは“正しい知識で案内してくれる存在”ではないでしょうか。
岡山県・鳥取県全域、島根県東部地域・広島県東部地域であればお伺いできます。
倉敷市から100km圏外の場合は交通費を頂く場合があります。
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