
事業活動において業務提携を行おうとする場合、当事者の片方または双方が相手方の営業秘密を含む情報を受領して、相手が提携に資するか判断する場面があるかと思います。
また従業員に対して、自社の秘密情報を外部に漏らさないよう担保が欲しいこともあるでしょう。
このような時には秘密保持契約を結んで、相手方に守秘義務を課すことができます。そうでないと営業秘密情報が目的外利用されてしまいかねません。
つまり秘密保持契約は守秘義務を課す契約です。
業種によっては元々守秘義務を課せられている職業があります。けれども一般には─紳士協定は別にして─ない業種がほとんどでしょう。それで、面倒でも秘密保持契約を結ぶ必要が生じるわけです。
情報開示者が秘密保持契約を結ぶメリットは次のとおりです。
法理では「秘密保持契約を締結していなければ受領した情報の利用制限を受けない」と解釈されています。そのため情報開示者の情報が第三者に開示されたり、目的外利用される恐れがあります。
また秘密保持契約では「何が秘密情報にあたるか」定義するのですが、これによって不正競争防止法に基づいて営業秘密侵害から保護されることにもつながります。
※不正競争防止法によって保護されるためには@秘密管理制 A有用性 B非公知性 の3要素を満たす必要があります。
秘密保持契約には2種類の型があります。
@契約当事者双方が秘密保持義務を負う双務契約型と、
A契約当事者の片方のみが秘密保持義務を負う片務契約型です。
@は当事者双方が守秘義務を負うので「契約」の形を取ります。契約書2通を作成し、双方が控えを保存します。
Aは当事者の片方のみが守秘義務を負うことから「誓約」の形を取ることが多いです。守秘義務を負う側が誓約書にサインをし、相手方へ差し入れます。このとき誓約書の写しを取って控えとします。
秘密保持契約を別に締結しなくても、本契約の秘密保持条項で足りるのでは? と思われるかもしれません。たしかに業務提携という本契約がある場合で、守るべき秘密が一般的なものであればそれで十分でしょう。
けれど、業務提携を前提にした場合であっても提携には至らないかもしれません。この場合に、開示した情報は秘密保持契約なしにどうやって守秘義務が担保されるのでしょうか。またM&Aのように交渉の事実そのものを秘匿したい場合など、本契約が存在しない場合もあります。
また秘密にされるべき情報が特別に守られるべきものであったり、込み入った取り扱いを条件にしたい場合は一般条項では足りないかもしれません。
そういう時に秘密保持契約の締結が必要になります。